理論編に引き続き、今回は計算編です。
前回までのリンクを貼っておきます。
私は複数科目の受験をしていたこともあって、時間の兼ね合い等から結果的に最後の科目が相続税法になってしまいました。
他の受験生も最終科目を相続税法にしている人が多かった印象があります(事情はそれぞれあると思いますが)
本試験が終わって会場を後にしていると、席が近くだった初対面の受験生の方が声をかけて下さって少しお話をしたのですが、その人も4科目合格済みで今回相続税法を受験したとのこと。
「次は税理士としてどこかで会いましょう」とその場で別れたのですが、全体的に3科目や4科目で相続税法を選択されている人が多かった感じがします。
そんな理由もあってからか相続税法はとにかく周りの受験生のレベルの高さに圧倒されました。
その中で合格するためには自分自身も相当のレベルまで引き上げないといけません。
ミスが少なく得点を重ねた人が合格に近づく
相続税法はこのように、受験レベルが高い傾向にあります。
それ故に得点源の簡単な問題でのケアレスミスが致命傷にもなり得ます。
もちろん他の科目でも同じことは言えるのですが、私にとっては相続税法がそれを特に感じました。
これは私が5科目を通して感じた個人的な感覚的な話です。
相続税法以外の科目はどちらかと言うと、とりあえず問題に全部手をつけて多少ミスでの取りこぼしがあったとしても他でカバーできていれば合格できました。
合格した年の解答速報で自己採点をした時もケアレスミスを幾つかありました。他でカバーできていたのか合計点で見ると問題なくボーダーを超えており、結果も無事に合格だったというような感じです。
一方で相続税法は、手をつけたものは確実に得点しないと他でカバーしようとしても周りの受験生もその部分は普通に取れているのでなかなか差が埋められません。
不合格の年を思い出してみると自己採点の時でケアレスミスが確か2、3ヶ所ありました。内容は宅地の評価で補正率の選択間違いだったように記憶しています。
合格した年は自己採点で確認した限りでは手をつけたところでケアレスミスはありませんでした。
周りの受験生のレベルが高いと言われると、自分も負けないように難しい論点や応用論点もしっかり得点できるように、本試験でも解かなければと思っていまいがちです。
私自身も最初はそう思っていました。
しかしそれでは私は結果が出ませんでした。
そんなこともあって、合格した年は考え方をガラッと変えました。
応用論点に固執せず基本論点でケアレスミスをしない。
あの本試験の焦りと緊張の環境下では、どんな人でもミスはしてしまいがちです。
だからこそ、自分がそこでミスをしなければそれだけで周りに差がつけられます。
応用論点や難しい論点で点を稼ぐのではなく、ミスを減らして点を守ることに意識をしました。
合格した年は、その考え方が功を奏したかなと感じています。
強弱をつけて問題を解く
計算問題に充てられる時間は70分程度かなと感じています。
これは本試験の制限時間120分で、うち50分が理論問題に充られることを想定してこの時間です。
その70分で計算問題に取り掛かるわけですが、全部の問題に同じ力量では解かないようにしていました。
問題の中には基本論点から応用論点、未学習論点まで様々な難易度の問題が混ざっています。
本試験の総合問題は結局のところ、個別問題の集合体です。
まずやることは、問題全体を見て(素読み)直感でパッと解けそうなところと慎重に考えて解くところを問題番号に次の記号をつけて分別していました。
- ◎→機械的にパッと解けるところ(基本論点)
- ○→時間をかけて慎重に解くところ(基本論点)
- △→時間をかけて慎重に解くところ(応用論点)
- □→時間が余れば最後に解くところ(応用論点・未学習論点)
◎は具体的な論点でいくと、預金や上場株式、証券、債務葬式費用などです。計算パターンも決まっているので、比較的時間もかからず解けるはずです。
パッと解くといってもミスは厳禁なので慎重かつ迅速に、です。
○は難易度によって△と比べる必要があります。論点で言うと宅地、非上場株式がメインになります。言わずもがな相続税法の計算の二大巨頭と言われる論点です。あとは生前贈与やみなし財産あたりです。
時間もある程度必要ですし、この辺りの出来が得点に大きな影響を及ぼしますので、ここが一番の勝負所となります。ケアレスミスもしやすいところになのである程度時間をかけて慎重に解く必要があります。
□は最初の分別の段階でピンと解答が浮かばないような応用論点や未学習論点が入るところです。ここで時間をかけてしまうと他の得点源に回す時間がなくなるので、最後に回します。
この選択を問題を解く最初の1分程度を使ってします。
納税額まで必ず算出しないと合格できないのか
最初の素読みで分別が終わったら、◎→○→△→□の順番に解いていきます。
解く流れとしては、
- 法定相続人、法定相続分、基礎控除を解答
- ◎の部分を最初から最後まで解く
- 最初に戻って○部分を解く(△と□も同様)
- 課税価格表を仕上げる
- 税額計算
2.と3.を記号順に繰り返すので問題を4回転する様な感じです。
そうすると財産評価が一通り終わるはずなので、それができたら課税価格表を完成させます。
その後、算出税額の最後まで進めて解き終わるといった流れとなります。
出題ボリュームによっては制限時間内に解き終えられるかといった問題が生じます。
私が受験生の時も最後まで不安が残っていた部分ではありますが「最終税額まで求められていなければ合格できないか」という疑問です。
確かに問題文では「納付税額を求めなさない。」と書かれているので、途中で終わらせていると問題の指示に従っていないことになってしまいます。
これに関してはなんとも言い難い部分があるのは正直なところです。しかし、私が合格した試験の時は最終税額まで到達できていませんでした。
具体的に言うと全体のボリュームが多く、一部の財産評価が難しく(分別方法で言うと記号は□)制限時間内に解ききれないと判断した部分があったため、それ以外ができた段階で課税価格表をまとめて、相続税の総額は求めました。
その後、税額控除(贈与税額控除や未成年者、障害者控除など)で単独で解ける部分を解答して最終集計の途中でタイムアップといった感じです。
解いた後の所感としても理論を含めて総合的にボリュームが多かったため、ほとんどの人が完答できなかったのではないかと思いました。
結果的にそれでも問題なく合格はできましたので、やはり周りの受験生が解ききれないぐらいの問題量の場合は「最終税額が求められているか否か」が合否に直結するものではないと感じています。
それより他の基礎控除や財産評価、税額控除の個別論点の解答精度が重要になってきます。
ボリュームが多いからといって全て解き切ることに意識しすぎて個別論点の精度が落ちないように注意が必要です。
結局最後は基本論点がしっかり得点できているか
受験してきた税理士試験の全科目に共通して感じましたが、特に相続税法で感じたことは、
「結局最後は基本論点がしっかり得点できているか」
でした。
基本論点をしっかり解いてその財産評価を基に集計して課税価格表をまとめて、税額計算へと進める。
これを徹底することで合格点に十分達することができました。
応用論点も「時間を使いすぎない」ように意識をして、変に応用論点に注力して問題を解かないようにもしていました。
これだけでも、基本論点に充てる時間を増やすことができます。
その分基本論点に集中して正確にスピーディーに解答することを心がけました。
応用論点に注力しすぎないようにするためにも、自分の中で「この問題は時間がかかるな」とか「これが本試験で出題されたらこの部分はこう解こう」みたいに、準備しておく必要があります。
そこまで達するには日頃の学習は疎かにせず、どんな問題が出ても対応できるぐらいの対策はしておかなければなりません。
対策不足だと時間がかかるであろう応用論点の判別も自分の中でできません。
日頃の勉強で全体を理解した上で「その中で本試験でどう立ち回るか」を意識しましょう。
よく応用論点などで「ここは捨て問題」といわれることもあるかと思いますが、それは勉強することも捨てて良いわけではありません。
勉強して理解した上で、本試験では敢えて取らないという選択をすることです。
もっと先のことを言うと、今の勉強は試験のことだけでなく税理士として活躍するための勉強です。
実務では何に直面するかわかりません。
せっかく勉強しているのであれば、一つでも多くの知識を取り入れてやりましょう。
ここまで長くなりましたが、これで私の合格体験記は全て終わります。
一受験生として感じたことを可能な限り書いてきたつもりですが、まだまだお伝えしきれていない部分もあります。
そのあたりは、また個別に記事にしていきたいと思っています。
読んでくださった受験生に、何か参考になることがありましたら幸いです。
それでは、また次回。
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