講義の最初に講師から言われた理論に対する一言。
「理論はこの理論集を一言一句覚えてもらうことになります。」
この一言で気が遠くなったのが今でも頭に残っています。
本当に理論は一言一句覚えないと合格できないのか。
受験生だった当時は何もわからないため、言われたことが本当のことなんだと信じるしかありませんでした。
なんだかんだ合格まで経験してきたわけですが、経験してみてその言葉の真意を思い返してみました。
一言一句書けない=合格できないわけではない
私自身今までの受験で理論問題を乗り越えてきたわけですが、それを通して感じたことは
「一言一句書かないと合格できないわけではない」
ということです。
反対に理論を一言一句書ければ必ず合格できる試験なのかというと、それも疑問に感じてしまいます。
これだけ聞くと
「じゃあ一言一句覚えなくて良いんだ、よかった〜」
と思われるかもしれません。
でも上の文面をよくみてほしいのですが、覚えるのと書くのは別です。
覚えるのは普段の勉強、理論暗記の時を言います。
書くのは解答用紙に記述すること、本試験の時をいいます。
当然ですが、覚えていないことを書くのは不可能です。
覚えていることを調整しながら解答用紙に反映することは可能です。
覚えた範囲内でしか解答を作成することはできない。
ということになります。
本試験ではどこが出るかわからない。
となれば範囲は際限なく広くなります。
税理士試験は競争試験です。
となれば周りに負けないぐらいの暗記精度が必要となります。
なので受験生に対して最初に理論学習のスタンスを周知する時は「理論集(全て)を一言一句(高い精度)で覚える」という言い方にどうしてもなってしまいます。
理論集に書いてある規定はある程度加工された文章
ほとんどの受験生は1校の専門校で申し込みをしていて、その学校が作っている理論集をメインに暗記をしているかと思います。
その1つの理論集だけ見ていると「今手元にある理論集を全員が覚えている」と思われるかもしれません。
私自身も最初はそう思っていました。
この理論集も各専門校によって同じ規定であっても書いてある文章が違ったり言い回しが若干違ったりします。
これは本来の規定を各専門校が受験対策用に加工しているためです。
本来の規定は読み取りづらいです。
税理士として仕事をしている今ではそれこそ実際の規定を読む機会の方が多いですが、流石にそのまま受験勉強に流用するのは厳しいなと感じます。
目の前にある受験勉強用の理論はある程度読み取りやすくされている状態です。
(それにしてもまだ覚えづらいと感じるのは正直なところですが…)
なので一言一句というのも、そもそもの覚えている規定が加工されているので、本来の規定を一言一句覚えているわけではありません。
なので本試験の採点でも「規定と一言一句同じではないからダメ」ということにはなり得ないです。
もしかすると講義の時にも句点の位置や句読点の位置まできっちりとまで言われるかもしれませんが、
実際の解答上そこまで求められるのではなくて「覚える意識としてはそのぐらいきっちり丁寧に覚えましょう」
ということです。
理論集は大切なキーワードを残しながら自然な文章でまとめられている印象です。
それを自分勝手にさらに加工してしまうと大切なキーワードが漏れてしまったり文章の意味合いが変わってきたりしてしまって減点対象になる可能性があります。
そういう意味も含めて「一言一句覚えましょう」という言い方になっているのだと思います。
一言一句覚えるのもあればそうでないのも出てくる
言ってしまえば税理士試験は一言一句書いた人が合格できる試験ではありません。
合格するためには、他の受験生より1点でも多く取れば良いわけです。
そのためには少なくとも、他の受験生に負けないような答案を作らなければなりません。
理論問題は何が出るかわからないですが、どの科目もある程度の重要性や出題予想が毎年あると思います。
その辺りを考慮して理論の規定の暗記精度に差をつけながら覚えていくことになろうかと思います。
重要性が高い理論は周りの受験生が高い精度で暗記してくることが予想されます。
もしその理論が本試験で出題されたとしたら、周りの受験生は高いレベルの答案を仕上げてくるはずです。
その中で負けない答案を作るためには、自分も高い精度で暗記をしておかなければなりません。
そう言った意味で減点対象にならないように一言一句に近いレベルでということになります。
私は重要性の高い理論は「負けないような答案を作る」意識をして暗記をしていました。
高いレベルでの競争になるのは必至なので、そこでさらに突き抜けるのは簡単なことではありません。
そこにこだわり過ぎると時間もかかります。
他の問題に充られる時間が無くなり、バランス良く得点を重ねることができなくなってしまいます。
なのでそういう問題は自分も高いレベルで差をつけられないようにする「負けない答案」を作成できるようにしていました。
重要性がそこまで高くない理論は周りの受験生も少し暗記精度を抑えてくることが予想されます。
ここからは自分がどこまでできるかになってきます。
自分が高い精度で暗記すればかなりのアドバンテージになるし、周りの受験生に合わせて自分の精度も抑えれば差がない状態。自分が覚えていなければ不利になってしまいます。
私は理論集全部を覚えており、このような重要性が高くない規定もそれなりの高い精度で覚えていたのでアドバンテージになりました。
私はこのような理論は「勝つ答案」を作ることを意識していました。
理由としては理論を全部覚えていたので、そこに自分自身の強みとして持っていたことが大きいです。
私が合格した税法すべてに共通していましたが、2題の理論が出題された中で1題は重要性が高い理論で1題が重要性が高くなかった理論が出題されました。
意識していたことがそのまま解答に反映することができました。
重要性が高い理論は「負けない答案」を作って上位に残りつつ、2題目の重要性が高くない理論で「勝つ答案」で上位で差をつけられたのかなと思っています。
(実際の採点結果を見られないので定かではありませんが…)
一言一句にあまり縛られない
規定を学習し始めた最初はしっかり丁寧に覚えました。
これは規定自体を理解する上では避けて通れないからです。
基礎を固めるという意味でも、この時点では「可能な限り一言一句覚える」ように意識はしていました。
ある程度基礎が固まって試験対策として考えるようになってくると、正直言うと最後まで厳密に一言一句覚えた理論はそんなに多くありません。
重要性の高い理論はそのつもりで覚えたけれど、数もそこまで多くありません。
それ以外は何かと工夫しながら解答できるように対策をしていました。
2時間という短い時間で理論だけでなくて計算もあります。
合格するためにはどちらもバランス良く解答しなければいけません。
理論にこだわりすぎて計算が疎かになるのもよくありません。
最初は丁寧に一言一句覚えることは大切だと思います。
解答用紙に実際アウトプットする時は、状況に応じて一言一句に縛られ過ぎないように対策することも合格するためには大切なことかなと思っています。
それでは、また次回。
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