簿記を教える立場としてネット試験も自ら経験しておかないといけないと思い、初心に返って簿記検定を再度受験してきました。やはり受験前はいつになってもソワソワしますね…。
今まで簿記検定は記述形式の一択でした。
しかし今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年6月の簿記検定試験が中止になったことを踏まえ、2020年12月よりネット形式の試験が導入されました(1級は従来通り記述形式のみ)
今回は、簿記検定を受験する上で記述形式とネット形式をいずれか選択する必要がありますので、両方の特徴をお伝えできればと思います。
従来の記述形式は試験時間が短縮
今まで日商簿記検定2級、3級はいずれも120分でした。
それが今回ネット形式が導入されたことにより、試験時間をネット形式に合わせるように調整されました。
- 3級 120分→60分
- 2級 120分→90分
もちろん出題ボリュームは調整されて少なくなっていますが、3級は従来の半分の時間なのでタイトな試験時間となっています。
なので試験勉強をする際には、時間のことも意識して学習を進めていく必要があります。
試験実施回数が違う
記述形式の場合は従来通り、会場で実施されることとなり年3回(2月、6月、11月)です。
それに対しネット形式は随時開催されるので受験機会を多く得ることができます。できるだけ早く受験して合格実績が欲しい場合はネット形式を受験されるといいかと思います。
受験勉強を始めるときにあらかじめ受験日が決まっていた方がそれまで集中して勉強することができるというタイプの人は記述形式が良いのではないのかと思います。
実際受験してみた感想
私自身、今まで記述形式で受験してきて今回初めてネット形式で受験してきました。
これは良いなと思ったことと、ちょっと注意が必要だなと思ったことがあったのでそれぞれ書いていきたいと思います。
良かったこと
- 自身の学習ペースに合わせて試験日を決められる
記述形式は試験日が決まっていて、それの日から逆算して学習を進める必要があります。ネット形式では自身が受けたいタイミングで予定を入れて受験することができるので、仕事しながら受験するという人にとっては自分の学習時間を考慮して決められる点は良いと思いました。ただ、これに関しては人によってはデメリットにもなり得ます(後述)が、受験方式と受験機会の選択肢が増えるという意味では良いことかと思います。
- 解答が楽
ネット形式だと画面上に問題文があってその下に解答する箇所があるので視線移動も少なく、解答もプルダウン方式(金額は手入力あり)のため解答が非常に簡単になりました。記述形式だと問題用紙から導き出した解答を別の答案用紙に記述するの繰り返しなので、それに比べると試験後の疲労感も違いました。
- 結果がすぐわかる
従来の記述形式は受験してから合格発表まで2週間程度時間を要しましたが、ネット形式はその場で合否がわかります。簿記検定3級ないし2級ををステップアップとして考えられている方にとっては大きなメリットではないかと思います。例えば3級合格したら2級に挑戦しようと考えられている人で、記述形式だと合格発表まで結果を気にしながら2級の勉強することとなるので多少なりとも精神的に落ち着かずに勉強に取り組むこととなります。ネット形式だと試験後すぐに次に切り替えて取り組むことができるのでメリハリがつきます。
注意点
- 試験日を自由に決められるが故に…
「自身の学習ペースに合わせて試験日を決められる」ということで良い点の一つとして挙げさせていただきましたが、自由に決められるが故の注意点があります。
一般的に試験はあらかじめ試験日が決まっています。その場合は明確に目標が決まっていますのでそれに向かって勢いに乗って直前期は適度に焦りながら、ひたすら勉強することとなります。試験勉強では「勢い」と「適度な焦り」はとても大事です。
それが試験日を自分で、余裕を持って受験できるように決めてしまうと自ずと勉強に力が入らず、ダラダラと勉強をする日々になってしまう可能性があります。
私自身も痛感していますが、自分が思っている以上に人は「自分に甘い」です。言い訳なんて無限に湧いて出てきます(笑)
「今日はしんどいから明日でいいや…」「まだ試験まで日があるから来週から頑張ろう」
それで結果がついてくるとは到底思えないですよね。
なので、試験日を決めるときは「ちょっと頑張らないと間に合わないかも…」と思うぐらいが丁度良いです。やりだすと意外とどうにかなります。
補足:私も「ちょっと頑張らないと」と思うぐらいの目標設定で受験してきました。
とりあえず3級を受験してみたかったというのがあったので、受けようと思った日から10日後に試験日を設定しました。そして30分で100点合格することを目標に掲げて10日間しっかり対策しました。いくら講師をしていて内容は頭に入っているとしても30分で100点はそれなりに対策をしないと厳しいです。初めてのネット形式ということもあってその対策もしていきました。
結果は、100点だったものの解答時間が32分で目標時間を若干超えてしまいました…。私は後半でケアレスミスしやすい傾向があるのでミスをしないように慎重に解いて見直しをした結果、思いの外時間を使ってしまいました。
自身の目標は達成できなかったものの「とりあえず受ける」ではなく「やるからには真剣に」取り組んだからこそ、ネット形式の傾向や対策もしっかり掴むことができました。
話が逸れてしまいました…。それでは本題の続きに戻りますね。
- ネット形式での対策が必要
学習は紙ベースでされる人も多いと思いますが、その場合は試験直前期はネット形式での解答に慣れておくように対策をする必要があります。過去問題でも問題なく紙ベースで時間内に合格点を取れるようになっていたとしても、ネット形式の対策をせずに本番に臨むと、思いの外解き進めるのに時間を要して本来の力を発揮できない可能性があります。
私自身も、ネット形式の過去問題を練習で解いて対策をしましたが、最初は慣れるまで解きづらさを感じました。
紙ベースだと問題用紙に重要文章にラインを引いたり、空きスペースにメモをしたりしてそれを参考にしながら解答をすることができました。しかしネット形式だと画面上にあるので同じようなことはできません。また、メモをするにしても配布される白紙に書くことしかできないので、普段から問題用紙にラインを引いたりメモをするタイプの人でネット形式を受験しようと考えられている方は、本番を想定して練習の時から白紙だけにメモを取って解答できるように対策をしておきましょう。
今はネット形式で答案練習できるような過去問題集も市販で販売されているので、そのようなものを利用して本番で焦ることのないように対策して臨みましょう。
合格したら扱いは同じ
どちらの形式で受験しても合格したら資格の扱いとしては同じです。
履歴書などの公的な書類にも同じように記入できるので、記述形式とネット形式に優劣はありません。
なので受験のことだけを考慮して選択すれば問題ありません。
今回から始まったネット形式も人によっては良いと感じられることもイマイチと感じられる人もいると思いますので、本当に人それぞれだと思います。
私自身、両方を経験してみて「断然こっちがオススメ」とはなかなか断言できないのが正直な感想です。
ですが、相談に来られたと考えて、私自信がアドバイスするとしたら以下の項目が選択の基準になるかと思います。
- ネット形式をオススメできる人
- 自分のペースで学習して合格を目指したい。
- 書くよりPC操作の方が体に馴染んでいる。
- 簿記検定は初めて受験する(記述形式をまだ経験したことがない)
- 出来るだけ早く合格実績が欲しい。
- 記述形式をオススメできる人
- 試験日が決められていた方がやる気になって学習できる。
- 学習が紙ベースだから試験も同じスタイルで受験したい。
- 以前も記述形式で受験経験がある。
- PC操作に不慣れで、自信がない。
現状はどちらでも選択することができるので、以前に記述形式で受験経験がある人は他に理由がある場合は別ですが、無理してネット形式で受験する必要はないかと思います。
PC操作といっても簡単な操作なので特に心配することはないです。何度か練習することで慣れます。
個人的には、自身の学習スタイルに応じて、どちらに魅力を感じるかで選択すること良いのではないかと思います。
どちらを選択するか悩まれている方へ本稿の内容が少しでも参考になり、合格の一助になれば幸いです。
それでは、また次回。
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